plasterer’s house

左官屋さんの家

敷地は、阿武隈山脈の南端を造成した団地の端に位置し、東に雑木林、眼下に夕陽が眺められる傾斜地である.施主であるこの道50年の左官屋さんと膝を交えながら、近代と在来とが葛藤するプロセスを経て、在来構法を用いつつもニュートラルな木架構の空間を目指した.大まかな建物の構成としては、敷地の高低差を活かして駐車場の上にスラブを置き、その上に東西約11m南北5.4mの木の梁構を載せた.平面構成は、南北が開口部と耐力壁とがストライプ状になるようにし、北側のワンスパンを収納+水廻り+玄関などのバッファーゾーンを設け、その南に居室群をレイアウトして、冬の寒さを領域的な工夫で和らげている.また東西には、風と人が通る”家の中の道” が貫通している.内外装の仕上げを木、塗、FRP、アルミなど、片手で数えられるくらいに限定し、ローコスト化と在来造りの中にも各要素がひとつの空間として知覚されるような、ミニマルな構成を目指した.左官屋さんの家ができて一年半.生涯で2軒目の家を納得のいくものにしたかった60代の夫婦は、ほんのちょっとモダンなライフスタイルにシフトするという設計者の目論見もさらりと受け入れ、長年夢見た自然に近く自由な生活を日々エンジョイしているようである.

plasterer’s house

2001